リコーダー紹介

たかがリコーダー、されどリコーダー

「リコーダー」と聞くと、どのようなイメージが浮かびますか?おそらく、多くの日本人には、教育用のおもちゃ楽器というイメージが強いのではないでしょうか。

リコーダーとは、どのような楽器なのか?実は、バロック時代(17〜18世紀中ごろ)には花形の独奏楽器としてとても活躍していた楽器でした。当時のJ.S.バッハやG.F.ヘンデル、G.P.テレマンなどをはじめとする偉大な作曲家たちの多くは、リコーダーを主役とする曲もたくさん残しています。

実際リコーダーは息を吹き込むだけで音自体を鳴らすことは容易なため、簡単な楽器と思われるのかもしれません。またそれゆえに教育用としてプラスチック製のものが大量生産され、リコーダーという楽器に対する誤解や偏見が広まってしまった悲しい現実があります。

しかし、単に音自体を鳴らすことが容易である一方、深みのある本当の"音"を出すのがそう簡単ではないのは他の楽器と同様です。しっかり吹き込めば、実は深く美しい音色を持つ楽器なのです。また、タンギングによる微妙な音の表情や、息遣いのわずかな変化による音色・音量の微妙な変化などなど、本当に奥の深い楽器なのです。

実は深いリコーダーの歴史

リコーダーは、西ヨーロッパでは中世にはすでに存在が知られており、ルネサンス音楽(15〜16世紀)にも盛んに用いられていました。そしてバロック期前半(17世紀)の頃にはほぼ現在のような形になったと考えられています。

その当時の器楽は、例えば王侯貴族が庭でひとり趣味にいそしむようなものだったり、例えば間近で演奏を聞かせたりするものだったりしたため、リコーダーのような手軽な楽器は他の古楽器と並び非常に愛されたのでしょう。

しかし、18世紀後半になってくると、王侯貴族が没落していき、一般市民向けの公開演奏会などが盛んになってきます。音楽は、演奏して楽しむものから聴いて楽しむものへと変化していき、ホールなどで演奏して聴かせるような商業的なものになったといえるでしょう。

そんな中で、リコーダーのような音量が小さく微妙な表現にこそ味のある楽器は、大きなホールでの演奏には向かず、活躍の場がなくなり、そして完全に廃れてしまいました。

実際、18世紀後半以降の作曲家、ハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンなどの時代にはリコーダーの曲は全く書かれていません。

19世紀末〜20世紀初頭になると、イギリスの音楽家であるアーノルド・ドルメッチが古楽器に興味をもち、これをきっかけとして様々な音楽家の研究によりリコーダーは復興しました。

日本では、1970〜80年代にかけてリコーダーブームが起こりました。

一方、オーケストラやピアノで最もメジャーな18〜19世紀頃のレパートリーにはリコーダーオリジナルのものが全くないことは、リコーダー愛好家の悩みのひとつとも言えるでしょう。

バロック式とジャーマン式

小学校の頃触れた、ソプラノリコーダーを思い出してみてください。最低音から「ド・レ・ミ・ファ」と上がった時に、単純に指をひとつずつあげていく運指を持つものが、ジャーマン式(ドイツ式)リコーダーです。それに対し、ファの音で右手の薬指、小指も押さえるものがバロック式(イギリス式)リコーダーです。

古くからのリコーダーはバロック式だったのですが、20世紀にリコーダーが復興した際、あるドイツの音楽家が改良して作ったのがジャーマン式リコーダーです。これは先に述べたようにハ長調の音階では運指が単純なため、ドイツや日本を中心に広まりました。しかし、それ以外の例えば半音階などは運指がややこしい上に音程も不正確、高音も不安定なため、もっぱら初心者や教育用としてのみ使われます。

プロのリコーダー奏者や、アマチュアの愛好家などでは、ほとんどバロック式のみが使われています。

ちなみに、右手の人差し指と中指の音孔を比較した時、人差し指の音孔のほうが大きいものがジャーマン式、中指のほうが大きいものがバロック式です。

プラスチックと木管

リコーダーはもともと木でできた木管楽器です。一方、リコーダーブーム以降にプラスチック(ABS樹脂)製のリコーダー(以下プラ管と表記)が広く普及しました。

プラ管は、非常に安価で入手しやすく、しかも手入れも簡単なため、練習用に最適です。また、長時間の演奏でもいたみにくいというメリットも非常に重要です。

それに対し木製の楽器は、天然の素材であるため、温度や湿度の変化に弱く、日ごろのメンテナンスが必要です。しかしそのような些細な苦労には替えがたい、プラ管にはない深みやあたたかみがあります。

また、木管楽器は吹く人や吹き方により楽器の癖が変わるため、自分好みに吹き込んだ楽器には一段と愛着が湧きます。

木製の主な使用材としては、メープル(楓)やつげ、黒檀など、柔らかいものから堅いものまで様々なものが使われます。中には桜やオリーブなどでできたモデルもあります。素材の堅さや材質は音質ととても関連が深いです。

さまざまな音域のリコーダー

リコーダーとして最もメジャーなものはアルトリコーダーで、初心者などはアルトから始めるのがよいとされています。小学校で使われるのはアルトよりもひとまわり小さいソプラノリコーダーですが、これは小学生だと手が小さくてアルトでは指が届かないからなのです。

一般に管が小さいほど少しの息の変化で音程や音質が変わりやすく、コントロールが難しいのです。

以下に主なリコーダーを紹介します。

クライネソプラニーノリコーダー
別名ガークライン、またはエクシレントとも。ソプラノリコーダーより1オクターヴ高い音域を持つ。アンサンブルではほとんど使われない。
ソプラニーノリコーダー
アルトリコーダーより1オクターブ高い音域を持つ。
ソプラノリコーダー
アンサンブルで主に高音域を担当する。
アルトリコーダー
楽曲名などで単に「リコーダー」というとこれを指す場合が多い。ソプラノリコーダーのちょうど1.5倍の長さを持つ。
テナーリコーダー
ソプラノリコーダーの2倍の長さで、1オクターヴ低い音域を持つ。キーや指掛の付いたモデルが多い。
バスリコーダー
アルトリコーダーより1オクターヴ低い。楽譜はヘ音記号のオクターヴ上げ表記で記される。
グレートバスリコーダー
テナーリコーダーより1オクターヴ低い。アンサンブルで使われることは稀。
コントラバスリコーダー
バスリコーダーより1オクターヴ低い。アンサンブルではバスリコーダーに重ねて演奏することも。

また、これより低い音域では、サブコントラバスリコーダーやサブサブコントラバスリコーダーなどもあります。サブサブコントラバスリコーダーでは、ソプラノリコーダーのちょうど12倍もの長さがあります。

グレートバス以下の音域の楽器では、通称「箱バス」と呼ばれるモデルもあります。